關渡宮の空間設計は他の廟と異なり、三川殿前に「天公炉」があります。参拝者は龍門から正殿へと進む前に、まずは天公炉で「天上至尊之神―天公」に参り、その後、媽祖殿・観音仏祖殿・文昌帝君殿でお参りを済ませ、続けて延平郡三将軍廟や財神洞等に参拝します。三川殿は漢様式の門構えで、上から下にかけて精緻な石彫装飾が満遍なく施されています。


  •   關渡宮の正面全体を見渡すと石彫が最も特徴的で、龍と虎の石彫の壁両側には石彫りの龍柱が立ち、古い歴史を有することから囲いで保護されています。龍と虎の傍にある「麒麟の壁」は、廟の石彫5種類の規定に沿って割り当てられています。各壁の「裙堵」部分には「博古草花図」を主題とした装飾が施され、「身堵」「側堵」には縁起のよい様々な動植物、伝説上の人物、虎・豹・獅子・象の四祥獣、猿・うさぎ・霊犬・鹿等の吉祥動物が見られます。


  •   三川殿の殿内上方には、巨匠の手による木彫作品と彩色作品が多々あり、二本の柱をつなぐ短い梁の下に見られる「員光」等、とくに匠の技を必要とする場所に見られます。中でも「斗」と「栱」で構成された三川殿の天井と、「藻井」の天井と梁をつなぐ色鮮やかな泥塑は、石彫正面の壁に対して「柔」と「剛」の鮮明な対比を織りなし、「場」の雰囲気と正殿を流れる「気」、信徒が静かに手を合わせる「誠」なる気持ちと併せて、人と神が同化する境地が感じられます。軒下には「吊筒」または「花籃」の木彫装飾が施され、その奥ゆかしさからは關渡宮の古典的な美しさが感じられます。